CBR開発ストーリー|誕生の裏側にあった“執念”
CBR250RRの物語は、ある会議室の静寂から始まった。
テーブルの上には一枚の紙。
そこに書かれた一行が、開発陣の魂に火をつけた。
「250ccスポーツの“本気”を、もう一度世界に示せ。」
当時、国内250ccは扱いやすさや経済性を重視したモデルが主流。
しかし、ホンダのエンジニアたちの胸には、別の想いがあった。

──『あの時代の“走りの熱”を、今の技術で蘇らせたい』
かつて若者たちが夢中で峠へ向かったあの情熱。
回転数の限界に挑むように走らせた、あの高揚感。
それを現代の技術で、再び形にする。
それがプロジェクトの原点だった。
「250だから」ではなく、「CBRだから」
初期ミーティングで語られたのは、数値やコストではなかった。
どれだけ胸を高鳴らせるマシンにできるか。
乗った瞬間に“自分の限界を超えられる気がする”車体にできるか。
「250だからここまででいい」という妥協は一切許されなかった。
スロットルのわずかなねじれにも反応する電子制御。
サスペンションは“速さ”より“意図に忠実な動き”。
車体は軽さよりも“攻めのラインを描ける剛性”。
目指したのは、数字では語れない官能性だった。
深夜のテストコースで生まれた一体感
開発が本格化すると、エンジニアたちは深夜のテストコースへ通い詰めた。
気温が落ち、エンジンの性格が変わる夜。
そのわずかな変化すら見逃さないためだった。
「まだ反応が遅い。
もっと、もっとライダーの意思を感じ取れるようにしたい。」
「ここで1ミリ軽くすると、コーナーの入りが変わる。」
「音が違う。これはCBRの響きじゃない。」
そんな会話が朝まで続いた。
そして、ある深夜。
テストライダーはコースを走り終え、ゆっくりとヘルメットを脱いだ。
その表情には疲れより、確かな確信が宿っていた。
「これ……本当に250ですか?」
この一言が、プロジェクトルームに歓喜を走らせた。
“RR”の名をつける覚悟
ホンダには、RRの名に対する独自の誇りがある。
ただ速いだけでは、RRを名乗る資格はない。
RRとは、
「ライダーの技量を極限まで引き出すために生まれた純粋なスポーツモデル」
を意味する称号。
開発責任者は、完成に近づいた車体に手を置き、静かに言った。
「こいつなら、RRを名乗っていい。」
それは、数年間にわたる挑戦が報われた瞬間だった。

🏍️ そしてCBR250RRは誕生した──
存在感を主張するフロントフェイス。
息を飲むほど鋭いスロットルレスポンス。
高回転で吠えるように伸びる並列二気筒。
まるでライダーの神経とマシンが直結したような一体感。
それは、ただの250ccスポーツではなかった。
“走りの歓び”を極めるために生まれた、純粋なレーシングスピリット。
CBRを愛する全てのライダーに捧ぐ、ホンダの回答。
CBR250RR。
ここに再び、「本気の250」が誕生した。